今日も天津飯
機械を巡るひとびと VOL. 008

タカさん
日本機械保線大垣事業所

仕事を次から次にこなし、率先してリーダーシップを発揮する。カリスマ性を持ちチームをまとめ上げる。私たちが求める、そして求められるリーダー像とは?ありきたりのリーダー像の枠に入りきらない魅力の持ち主。

2023年春|大垣にてインタビュー

大垣に魅力的なオペレータがいる、以前からそんな噂を耳にしていました。彼を知る人は誰でも口を揃えて、“面白い人です”と言います。ぜひお話を伺いたいと取材のチャンスを待ち続け、ようやくその願いが実現しました。今回は日本機械保線大垣事業所のタカさんの働く姿とその魅力の理由を追いました。

 

写真:インタビュー開始時 少し緊張気味のタカさん

 

――タカさんは20年以上のキャリアの持ち主。事業所の中でも、最も経験年数の長いエキスパートの一人です。入社後は名古屋、岐阜エリアで働いてこられたとお聞きしています。このエリアの保線作業の特徴はどんなところですか?

タカさん(以下、タカ)貨物列車の運行が夜間もあり、保線作業時間が非常に短くなります。それがこのエリアの特徴です。作業現場までの移動も含めて僅か1.5時間という時もあります。その場合、現場での突き固め作業時間は30分。現場に到着してから撤収するまで、その間の動きは一つも無駄にできません。作業打ち合わせでも、時間については必ず全員で共有するように心がけています。

 

――時間管理が非常にシビアな作業ですね。作業を終えて無事に戻ってくるまで一息つく暇もなさそうです。現場責任者としては、大きなプレッシャーになりますね。

タカ:そうですね、

大事な役割なので常に神経を使う仕事だと思います。ただ私の場合は恵まれていて、周りにいる若い方たちが頑張ってくれるので、安心して仕事に向き合えています。

 

写真:マルタイをバックに作業チーム アリトさん(左)、タカさん(中央)、ナツキさん(右)

写真:マルタイをバックに作業チーム アリトさん(左)、タカさん(中央)、ナツキさん(右)

 

――ナツキさん、アリトさん、お二人の先輩であるタカさんと一緒に動くことも多いと思います。お二人からみて、タカさんはどんな人ですか。

ナツキさん&アリトさん:仕事をご一緒することになってからまだ1年ほどですが、とにかく元気で良く食べる先輩の印象です。昼食でラーメン屋さんへ向かうと、タカさんは「天津飯と台湾ラーメンセット」を必ず注文します。先週も今週も。春夏秋冬、季節で変化することもなく、毎回そのセットを食べています。お店に着く前から、タカさんの天津飯と台湾ラーメンを待ち構え、口を大きく開けるタカさんが目に浮かぶのです。あれ、これ仕事の話と関係ないですね。

 

写真:タカさんについて笑顔で話すナツキさん(左)、アリトさん(右)

 

――どんな人?と伺って最初に食べ物の話題が出てくるくらいですから、食欲旺盛なのは間違いないですね。職場でのタカさんは?

ナツキさん&アリトさん: 一言でいえばムードメーカーです。タカさんの人柄なのだと思いますが、何をしても人を惹きつける先輩です。嘘をつくこともないですし、取り繕うこともありません。昔はタカさんもマクラギを割ったり、アウトリガーを破損させたりしたこともあったそうです。仕事上で様々なトラブルを引き起こしても、周りの人たちが喜んで手を差し出したくなる愛されキャラです。ゆるキャラの“くまモン”のようなイメージです。

そういうと、仕事をあまりしていないように聞こえるかもしれませんが、仕事に対しては真面目に淡々とこなす方です。

 

――タカさんはこの職場に絶対に必要な存在だと聞こえます。食べることが好きだと聞きましたが、一番好きな食べ物は何ですか?

タカ:天津飯です!中でも岐阜大学近くのラーメン屋の天津飯は最高です。フワフワの卵の食感の虜になっています。そして。。。。(以下、長いので省略)

 

――タカさん、仕事の話に戻っても良いでしょうか。現場責任者として心がけていることはありますか。

タカ:命を危険にさらさないことですね。それだけはチームの全員に徹底してもらいます。

 

――非常にシンプルな答えですね。仕事の内容が多岐に渡るので、気を付けなくてはならないこともたくさんあるかと思います。そこを一言で明確に答えるのはさすがです。シンプルな言葉だからこそ、チーム一人一人にも確実に伝わる内容だと思います。

タカ:はい、一番大切なことだけをシンプルに。命が大切、それだけです。それ以外の多少のトラブルは語弊があるかもしれませんが、大したことではありません。意外と何とかなるものです。

それに一人がどれだけ頑張って仕事をしても、所詮小さな力です。私たちの仕事は個人プレーでどうにかなる仕事ではありません。一人で頑張りすぎて命を危険にさらすくらいならば、落ち着いて安全に行動すべきです。

 

写真:タンピングユニットの清掃をするタカさん

 

――そう聞くと、作業にも思い切って取り組むことができそうです。タカさんはきっとこれまでに良き先輩に出会う機会があったのだと思います。これまでの仕事の中で、どんな言葉が一番印象に残っていますか?

タカ:「機械に使われない。機械を使ってこそ一人前」この言葉をいつも忘れないようにしています。この言葉は以前、上司だった方に教えて頂きました。私たちが使っているマルタイは良い機械ですが、あくまで道具。機械がその力を発揮できるかどうかは、道具を使う私たちにかかっています。

例えば機械が故障したとしても、機械が悪いのではなく、私たちの普段の機械管理(メンテナンス)が足りなかったということ。先ほど私たちの作業場所は作業時間が限られているとお話しました。もし作業中に不要な機械トラブルが発生すると、私たちは短い時間でリカバリーしなくてはなりません。場合によっては取返しのつかない事象になるかもしれません。厳しい環境下だからこそ、「機械はあくまで人が使うもの、私たちが使われるようになってはいけない。」いつもこの言葉を心に持ち続けています。

 

――「機械に使われない。機械を使ってこそ一人前」。大きな責任を担う保線機械に携わる方ならではの言葉ですね。機械と向き合う方の覚悟・心意気を感じます。

タカ:はい、私の大好きなことばです。そういえば私にこのことばを渡してくれた先輩は、この機械が日本に到着し、輸送船から陸に積み下ろすときに立ち会えたそうです。今その機械に私が携わっているのもご縁なのかもしれません。

 

写真:機械図面を熱心に見つめるタカさん

 

――最後にこれから先の仕事のイメージについてお聞かせください。

タカ:10年後には50代前半になっています。それまでに様々な経験を積み重ねているでしょう。その経験を踏まえ、安全指導を担っているかもしれません。個人的には現場で働く方が好きなので、デスクワークをしている自分がイメージできませんが。

 

タカさんの愛用品 「天津飯」 in 岐阜大学近くのラーメン屋

これを食べないことには生きていけない!とタカさんに言わしめる天津飯。本来であればその味を確認しに行きたいところでした。今回は取材の関係上、直接味わうことができませんでしたので、近くに行った際にはぜひ行きたいと思います。

写真:天津飯(タカさんのお気に入りの天津飯ではありません。)

――編集後記――

自分を着飾ろうとせず、どこまでも自然体な姿のタカさん。周囲の人もタカさんが過去に引き起こしたトラブル等を屈託なく笑いながら話していました。自分ではなく、チームのことを一番に考え行動する姿勢がタカさんの魅力の根源に感じました。そして何より食に対する飽くなき欲望が印象的でした。食べることは生きること。命をキーワードにつながると捉えるのは考えすぎでしょうか。「どう逆立ちしても、この人には敵わない」そう感じました。